隠された石の配置
中流域から下流域になると、潤辺単位が一気に広がりを見せる。福養橋から下流になるとその距離幅は、洪水流でもまかないきる川幅を持っている。つまり、護岸に水当たりが無くなる。そして、勾配差も徐々に緩くなっている。
さて、低きに流れる流体の圧力は石の配置形状を移し変えるとは言え、定常流になると圧力による波高は無くなり、流れの中に渦による皺が波高に取って代わるようになる。流芯の速い流れ(流体)の横に出来る深い皺は、流れに向かって小波のような形状を作る。水の振る舞いはそればかりではなくて、湧き上がってくる模様と渦流とがそれぞれいりこむように流れを作る。いわゆる「よれ」である。大石が流芯に点在しない長い流れになった場所では、この様な水の振る舞いの下には、敷石の石より大きめの石が並ぶように配置されていることが多い。つまり、河床が上下に変化がある状態となっている。流体(流芯)の河床は平らな溝の造体となっていて、いわゆる掛け上がりがその溝の壁のような造りとなる。流芯が大きな波を打つ流れの両脇に、この石群がある。水面より出ないこれらの石群は,表層流に多様な模様を描くが、波高として目立った波の形状は無いのが普通である。
中小河川では縦皺の波になるが、大きな河川では目立たない「よれ」となっている場合が多い。水嵩によって表流層が波をさらう為であろう。この様な大きな河川では、川を横に切って歩いてみると石の配置が分かりやすい。視認できるのは、表流層の流れの中に渦かもしくは停滞しているような水の振る舞いである。
[ 抵抗物と勾配差は上流域に比べると,つまり、石の大きさは小さくなり勾配差も緩やかになるが、抵抗物(石)の数量は上流域と比較すると多い。近年は山間の急峻な沢に砂防提を多く設ける為にかえって砂の流失を起こしている。砂は潤辺単位を少なくする、結果、水量の減少と河床の単純な形成による生物の減少を引き起こしている。砂は複雑な河床乱流によって、巻き上げられ流される。砂の量が多いと乱流が起こされずに、やや大きめの小粒な小石だけの河床となる。中流域においては、大石の裏に巻き上げられた砂が堆積している。]
この様に、中流域の特徴は波の多様性を視認出来る点にあるように思われる。潤辺の広がりによって、もしくは勾配差の緩急によって、或いはその両方によって、流体のエネルギーが引き起こす多様性を見ていることになる。
中流域では、緩慢な流速の場に石の群れが多くあることが多い。これら、石の群れは3種類の波によって隠される。渦、湧き上がり、小波(皺)、等が本流体(流れの筋)の脇で線描きされている。